歴史の方法

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国史大辞典

国史大辞典

要約:日本歴史を知るためのスタンダードな百科事典

 

国史大辞典(全十五巻・全十七冊)

国史大辞典(全十五巻・全十七冊)

 

 国史大辞典 第1巻 あーい

 

書誌情報

  • 編者国史大辞典編集委員会
  • 出版社吉川弘文館
  • 内訳 全15巻・17冊(15巻が上中下に分かれるため)第1巻(あ~い)1979年、第2巻(う~お)1980年、第3巻(か)1983年、第4巻(き~く)1984年、第5巻(け~こほ)1985年、第6巻(こま~しと)1985年、第7巻(しな~しん)1986年、第8巻(す~たお)1987年、第9巻(たか~て)1988年、第10巻(と~にそ)1989年、第11巻(にた~ひ)1990年、第12巻(ふ~ほ)1991年、第13巻(ま~も)1992年、第14巻(や~わ)1993年、第15巻上(補遺、史料・地名索引)1996年、第15巻中(人名索引)1996年、第15巻下(事項索引)1997年
  • 頁数:各巻平均1000ページ以上。
  • 値段:1~14巻は18000円+税、15巻の三冊は15000円+税。
  • 表記:縦組、四段組。

 

内容

  • 対象:時代は全時代で近代も含む。日本歴史について網羅的な百科事典。
  • 収録数:総項目数54000余。本文解説・付表・付図・別刷図版は16000頁。延べ50万語が索引に。
  • 詳細:人名・地名・事項・史料などについての百科事典。14巻まで五十音順。15巻は上中下の三分冊。15巻上には14巻までの補遺と、史料・地名について各索引。15巻中には人名索引。15巻下には事項索引。史料、地名、人名、事項の索引の区分は、下記の通り。

「史料」は、典籍・文書・記録・金石文、絵巻・絵図・地図、経典、歌集、能・狂言浄瑠璃、叢書、および前近代の法律書など。(写経、古筆切、曲名、条約、近現代の法令、法典などは「事項」に分類)

「地名」は、山・川・島、国・郡・荘園・藩、都・道・府・県、市・区・町・村、街道・新田・塩田・鉱山・水道、および外国国名・王朝名など。(架空地名、陵墓、関、橋などは「事項」に分類)

「人名」は、実在人物・架空人物、姓氏、家名、および人名を付した肖像画・肖像彫刻など(神名、屋号などは「事項」に分類)

「事項」は、上記以外のもの、および史料・地名・人名の名数

  • 付記:項目によっては、参考文献が挙げられている。図版付きの項目もあり、近代に関係する別刷図版に、4巻の汽車、近代の教科書、黒船、軍艦、6巻のコンドル、日本の雑誌、7巻の近代の紙幣、8巻の近代の絵双六、西南戦争、12巻のペリー来航、戊辰戦争、13巻の三井家、民家、14巻の郵便、養蚕業、横浜絵、立憲政治がある。

 

参考例

こくみんのとも 国民之友 蘇峰徳富猪一郎が創立した民友社から発行の本格的綜合雑誌。明治二十年(一八八七)二月十五日創刊、三十一年八月第三七二号限りで廃刊。最初は月刊、第九号から半月刊、さらに旬刊となりのちには週刊となった。体裁は四六判が長く続き廃刊間近には菊判に変わった。創刊号の表紙肩書に「政治社会経済及文学之評論」とあるように、当時の知識人をほぼ網羅的に動員し、各分野の開拓発展に多大の貢献を果たした。本誌の構成は概略次のように分かれている。(一)「国民之友」欄は社説欄に該当するところで、無署名であるが民友社すなわち蘇峰の主義主張を掲げた。(中略)蘇峰は社長兼主筆として平民主義を標榜し、進歩的ナショナリズムの立場から専心編集の任にあたり、人見一太郎・阿部充家・徳冨蘆花・竹越与三郎らが社員として編集に従事した。日清戦争を契機にして蘇峰の思想的転換をみるに及び誌勢は急速に低下し、『家庭雑誌』やThe Far Eastとともに『国民新聞』に吸収され廃刊に至った。発行部数創刊時一万余部、明治二十三年各号約一万千部。創刊号から終刊まで(欠号あり)を東大明治新聞雑誌文庫に、第一四号から終刊までを国立国会図書館に所蔵。覆刻版と総索引が昭和四十一年(一九六七)から四十三年にかけて明治文献から出版された。【参考文献】徳富猪一郎『蘇峰自伝』 (北根豊)

 第五巻pp.695,696より引用

 

使い方

 索引をうまく使いたい。上の例で言うと、『国民之友』は雑誌なので第十五巻上の史料の索引を引く。すると、112ページに

国民之友こくみんのとも ⑤695d  ①147b〔朝比奈知泉〕534b〔石橋忍月〕②118d〔内田魯庵〕④665d〔近代(文化)〕833a〔国木田独歩〕⑤691b〔国民新聞〕⑥256b〔酒井雄三郎〕364:365【別刷】〈日本の雑誌〉378d〔雑誌〕569a〔三酔人経綸問答〕⑦189a〔社会小説〕⑨60b〔高橋五郎〕712c〔塚越停春楼〕⑩330c〔徳富蘇峰〕⑪509c〔幕府衰亡論〕954a〔人見一太郎〕⑫457b〔平民主義〕⑬485b〔三宅雪嶺〕493a〔宮崎湖処子〕579c〔民友社〕760a〔メーデー〕⑭146c〔山路愛山〕812b〔鹿鳴館時代〕858c〔若松賤子〕

 と書かれている。太字のページは「国民之友」の項目がある箇所を示す。それ以外の箇所は別の項目中での言及を示す。例えば⑩330c〔徳富蘇峰〕は、第十巻330頁の三段目(abcdは、1234段目に対応)、徳富蘇峰の項目中に「国民之友」が言及されている、ということだ。他の人名や事項でも、同様の手順で言及箇所を探す。項目にない言葉も、索引から知ることが可能である。

 

備考

これを知らない日本史専攻はモグリ、というほど普段使いするスタンダードな百科事典。参考文献もついており、大体のことは調べがつく。レポートなどの注に登場多数。重さと大きさがややネックだが、二〇一〇年からジャパンナレッジに入り検索が格段に容易になったという。実際、ジャパンナレッジの方が網羅的な検索が可能だ。「国民之友」で引くと、本の索引記載以外に言及箇所があることが分かる。一例としては、西南戦争で行方不明になった父を思う孝女を歌った「孝女白菊の歌」で有名な落合直文の項で、「森鴎外らの新声社同人として訳詩集『於母影(おもかげ)』(二十二年、『国民之友』附録)の翻訳に参加した。」(第二巻859ページ)とあるが、十五巻の索引には載っていない。ジャパンナレッジ検索に軍配が上がろうか。もっとも、図書館に閉じこもって運動不足気味の方にとっては、国史は筋トレにうってつけの道具でもある