歴史の方法

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日本近代史辞典

日本近代史辞典

要約:戦後最初の日本近現代に関する百科事典

日本近代史辞典 (1958年)

日本近代史辞典 (1958年)

 

 書誌情報

  • 編者京都大学文学部国史研究室日本近代史辞典編集員会
  • 出版社東洋経済新報社
  • 出版年:1958年11月
  • 頁数:990頁。(辞典3~645頁、付録647~835頁、統計836~922頁、索引922~990頁)
  • 値段:定価3000円(現在品切)
  • 表記:横組、二段組

 

内容

  • 対象:時代は「嘉永・安政期から現在に至る100余年間の諸事項を取り扱い、特に近代史と関連の深い事項は、それ以前の時期にも及んだ」、項目は「政治・外交・経済・社会・文化の諸分野」とある通り、出版時までの近代全般の百科事典。
  • 収録数:約3300。小項目に加え、大項目も立てられている。
  • 詳細:付録・統計あり。付録は諸藩一覧など37、統計は人口の推移など63.

参考例

満州事変 マンシュウジヘン (突発1931.9.18,昭和6)*柳条溝事件に始まる日本軍の満州(中国東北)侵略。その結果カイライ国家として*満州国が樹立され、日本は*国際連盟を脱退した。(中略)

満州事変と*金輸出(再)禁止とにより、いわゆる満州ブームが生れたが、跛行的なものにすぎず、農村の不況は深まった。しかもこの好況も日本の国際的孤立、中国の日貨排斥によってやがて行きづまり、日本は新たな侵略と戦時体制化に突き進んでいった。(柳条溝事件上海事変、熱河作戦、塘沽協定、満州国リットン調査団国際連盟脱退、日中戦争、満蒙特殊権益、関東軍、金輸出禁止)〔参考〕歴史学研究会、太平洋戦争史、1953;若槻礼次郎、古風庵回顧録、1950;原田熊雄、西園寺公と政局(2)、1950;山口重次、悲劇の将軍石原莞爾、1952;緑川史郎、日本軍閥暗闘史、1957.(今井清一) 

―pp.572,573より引用

使い方

*の記号と項末の()で、この辞書中に項目のある用語がわかる。参考文献も記載されている。索引は、「満鉄 573l 622r」のように太字が項目のある頁、細字が言及される頁を示す。lとrはleftとrightで右・左列のこと。

備考

古い辞典のため、使用には注意が必要だ。上の例でいえば、研究が進み、現在は柳条事件ではなく、柳条事件という呼称が一般的となっている。

この記事を書くため図書館所蔵の本を利用していて、面白い例を見つけた。付録17日本海軍軍閥系譜では、山本五十六が艦隊派将佐官の系譜に位置付けられているが、そこに「誤り 山本五十六米内光政井上成美の線上にあり明確な条約派」と鉛筆で書き込まれている。さらにその脇には、青ボールペンで「ソノ通リ。」と添えられている。条約派・艦隊派の区分には戦前も戦後もいろいろと論があるようで、こういった箇所からその揺れが見て取れよう。

以上のように、現在調べ物をするときはより新しい辞典にあたったほうが無難といえる。この辞典が編集された時点での評価を知るうえでは、本書は参考になるかもしれない