歴史の方法

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角川日本地名大辞典

角川日本地名大辞典

要約:都道府県ごとの地名辞典の決定版 

角川日本地名大辞典 13 東京都

角川日本地名大辞典 13 東京都

 

 書誌情報

  • 編者:「角川日本地名大辞典」編纂委員会
  • 出版社角川書店
  • 出版年:1978年~1990年
  • 値段:巻ごとに異なる。定価は15000~20000円だが現在品切れ重版未定。オンデマンド版は注文で入手できるようだ。なおCD-ROM版と、平成の大合併も含めて改訂した新版としてDVD版も発売(2011年)されたようだが、在庫がないようだ。
  • 表記:横組、二段組

内容

  • 対象:「民族遺産としての地名を将来に伝えることを目的として計画されたもの」であると同時に、「現時点での地名を収録し、現代の社会生活上の必要を満たし、地域の現状を歴史として後世に伝えることをも企図するもの」。各都道府県ごとの地名辞典で、各一巻全四十七巻(北海道と京都は上下)、別巻は1日本地名資料集成、2日本地名総覧。
  • 詳細:各巻は、総説、地名編、地誌編、資料編の四つに区分される。

 

  • 総説:「都道府県の全域を単位とし、その地理的状況と、原始から現代までの歴史的展開、さらに現状を記述して、地域内に分布する地名と自然・社会・文化との相関を明らかにした。」
  • 地名編:五十音順による地名の項目。歴史的行政地名、自然地名、人文地名の三種。近現代の歴史的行政地名としては、「県・郡・市・町・村、および市町村内の大字・町名など」が収録。自然地名は、「山・丘陵・台地・峠・坂・原野・森林・川・谷・湖沼・滝・浜・半島・島・温泉など」。人文地名は「道路・街道・堀・用水・池・ダム・橋・渡し・鉄道・公園・神社・寺院・史遺跡・城館、および地域の通称・俗称・汎称など」。歴史的行政地名の解説は、別称、地名の性格規定、行政上の所属、地名成立の状況、地域の自然的・人文的内容、新地名への移行、現在地比定といった事項を中心に記述されている。
  • 地誌編:現行の自治体(市区町村)を単位として、現況、立地、沿革、史跡・文化財文化施設、現行行政地名を解説。
  • 資料編:巻によって内容に違いがある。小字一覧、国郡沿革表、藩県沿革表、市町村沿革表、年中行事、参考地図、参考図書目録など。東京都の場合、小字一覧、東京都地名名数一覧、東京都行政変遷年表、江戸・東京地誌類目録、参考地図。
  • 別巻:1日本地名資料集成は、都道府県別の四十七巻の総論として、地名に関係する歴史的な展開を叙述する。序章日本の国号から古代中世近世の章があり、近現代に関しては「第八章 近代国家と地方行政」において地方制度の確立が法令等の史料を引用しつつ語られる。「第九章日本の自然と風土」は自然地理的環境について。「第十章地名主要史料解説」では古代から中世までの地誌の解説・紹介。「第十一章地名の研究」には地名研究に関する論考収録。

 

参考例

まちだ 町田〈町田市〉

中世における町田市域の中心集落に発する地名で、永禄二年の「役帳」に小山田庄町田とある。天正10年に村内原野を開発して原町田村が分村、もとの村を本町田村と称し、江戸期には本町田村、原町田村が併存した。近代に自治体名に採用され現在に至っている。

〔中世〕町田 戦国期に見える地名。(後略)

〔近代〕町田村 明治22年大正2年の村名。江戸期以来の原町田・本町田・森野・南大谷4か村が合併成立。はじめ神奈川県南多摩郡、同26年からは東京府南多摩郡に所属。(中略)

〔近代〕町田町 大正2年~昭和33年の町名。大正2年町田村に町制が施行されて成立。(後略)

まちだかいどう 町田海道 

高尾(八王子市)から鶴間(町田市)に至る道路。(後略)

まちだし 町田市⇒〈地誌編〉町田市

以上、p656より抜粋引用

 

使い方

まずは別巻2日本地名総覧の町田の項目を抜粋してみる。

まちだ 町田 青森875 弘前市〔中- 近-村 代- /1097〕秋田612 男鹿市〔近-村 代- 〕(中略)東京656町田市〔中- 代-村 代-町〕(後略)p1892より引用

 各地に町田という地名があることが分かるが、読んでみたところ町田はありふれた地名であり地域間で影響関係にはないようだ。参考例で引用した町田については、近代でも行政単位の変更で項目の解説が異なることに注目できよう。現行の行政単位である町田市は地誌編に解説が掲載されている。そちらは現在の町田市の地域全体の沿革や現状を解説しているが、沿革については原始から説き始めており参考例の引用より詳しい。本町田、原町田といった現行行政単位の地域も、郵便番号、人口、主な施設など書かれている。地名などをピンポイントに調べる場合は地名編を確認し、地名を含む地域の歴史全体を知る場合には地誌編にも目を通すことになるだろう。地名の関係などを調べる際には、索引から各地の項目を確認するなど、今回挙げたより複雑な使い方をする必要がある。

 

備考

JLogosの有料会員で地名編の項目を検索できるようだ。 類書に『日本歴史地名体系』があり、こちらはJapanKnowledge収録のため、普段はこちらを用いることが多い。それに今回書いている途中三回ほどデータが消え結局二時間ほどかかってしまったので、少し浅い紹介でした。