歴史の方法

近現代日本を調べるためのブックガイド。ググらず自力で調べるのに役立つ、事典や目録などの書物を気ままに紹介していきます。

くずし字用例辞典

くずし字用例辞典

要約:漢和辞典の配列による、くずし字を読むための座右の書。

くずし字用例辞典 普及版

くずし字用例辞典 普及版

 

 書誌情報

  • 編者:児玉幸多
  • 出版社東京堂出版
  • 出版年:1993年
  • 頁数:1305頁+63頁
  • 値段:5800円+税
  • 表記:縦書、二段組

内容

  • 対象:漢和辞典に載るような漢字をくずし字で配列。頻出度により差はあるが、1各漢字について、くずし方を数通り掲げる。2各漢字について、歴史上の語句の使われ方の分かる「用例」をくずし字で記載。a古代・中世b近世c明治以降d編者が任意に書きそえたもの、の四通り。3各漢字を含む用語を併記。
  • 収録数:6406字
  • 詳細:対象で説明したような漢和辞典配列のくずし字辞典のほか、かな字、扁旁冠脚のくずし方、漢字音訓索引あり。
  • 付記:『くずし字解読辞典』に続いて出版された辞典。詳しくは『くずし字解読辞典』の項参照。机上版、普及版とあるが、普段使いには普及版を勧める。

参考例

1903 11  テキ かたき あだ 敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵(注:くずし字)

〔用例〕a1敵手2敵船3敵視4b敵悪5敵役6敵意7c敵應8敵地9敵愾10敵彈(注:くずし字)

1敵手2敵船3敵視4敵悪5敵役かたきやく6敵意7敵應(応)8敵地9敵愾10敵彈

〔用語〕敵人 敵兵 敵性 敵背 敵陣 敵國 敵情 敵軍 敵娼あいかた 敵勢 (後略)

p439より引用。

使い方

前回紹介した『くずし字解読辞典』は、文字の形に即した検索に適していたが、その姉妹編で今回紹介する『くずし字用例辞典』は、ある文字のくずし方を調べるのに適している。漢和辞典のように配列されているので、部首索引や音訓索引から調べたい漢字を確認すればよい。登場頻度が高ければ、その漢字のくずし字のほか、くずし字で書かれた用例や、楷書の用語も掲載されている。

 

具体的に述べよう。敵という漢字を調べる場合、漢和辞典と同様の方法で(説明省略)p439に辿り着く。各漢字の上部には1903のような通し番号がついている。敵の場合は11画目なので11と右上部にもある。字の下には音訓が記載され、その下にさまざまなくずし方で漢字が書かれる。次いで用例は時代ごとの語句がくずし字で掲載される。用語は印刷の楷書体である。くずし字は文脈で読む面も多々あるため、一文字で判別しにくい場合も用例のくずし方から確認できることもある。用語ではくずし字でこそないものの、その漢字を含む用語が幾例か挙げられており、やはり便利である。

備考

『くずし字解読辞典』よりも収録数や収録例が多く、用例や用語も合わせて便利なくずし字辞典。これがあればくずし字調査は十分足りる。辞典は読物ではないので人に勧めはしないが、時間があるとき通読するとくずし字のパターンが分かるようになる。