歴史の方法

近現代日本を調べるためのブックガイド。ググらず自力で調べるのに役立つ、事典や目録などの書物を気ままに紹介していきます。

日本史文献事典

日本史文献事典

要約:日本史学の研究書の内容を、原則著者に語らせる。

日本史文献事典

日本史文献事典

 

 

内容

近代に限らず全時代を対象として、日本史学の研究文献(戦前・戦後ともに)の内容について原則著者に、またはその分野に詳しい研究者に説明してもらった事典。前回取り上げた『日本史文献解題辞典』は史料を扱っているが、こちらは史料は扱わず研究文献だけなところに違いがある。著作が大半だが、研究史上で著名な論文も記載する。

分量は四段組のうち一段ほどが基本だが、各時代十点ほどの重要文献とされた項はやや長め。(近代と現代では以下21点の著作を見つけた。家永三郎植木枝盛研究』、五百旗頭真『米国の日本占領政策』、石井寛治『日本蚕糸業分析』、伊藤隆『昭和初期政治史研究』、井上清『明治維新』、色川大吉『明治精神史』、鹿野政直『日本近代化の思想』、高村直助『日本紡績業史序説』、竹前栄治『アメリカ対日労働政策の研究』、遠山茂樹明治維新』、中村隆英『戦前期日本経済成長の分析』、中村政則『近代日本地主制史研究』、羽仁五郎明治維新史研究』、坂野潤治明治憲法体制の確立』、細谷千尋『シベリア出兵の史的研究』、松尾尊兊『大正デモクラシー』、丸山眞男『現代政治の思想と行動』、三谷太一郎『日本政党政治の形成』、宮地正人『日露戦後政治史の研究』、安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』、山田盛太郎『日本資本主義分析』全頁を確認したわけではなく、神経衰弱のように当てを付けて探したので漏れがあるはず。)

 

使い方、備考

基本的に著者による説明や批判への反論が参考になる。「…すでに一定の研究がある分野は適切な著述もあり、また本書の叙述の範囲からの類推が可能であるかと考え、ほとんど触れなかったが、説明不足気味の文体ともども不親切であったかと思う。」というように自ら課題を提示する項や、著者に代わり「はたして本書を超える作品が書かれているだろうか。」と説く項もあり面白い。

社会学文献事典』の姉妹本である。