歴史の方法

近現代日本を調べるためのブックガイド。ググらず自力で調べるのに役立つ、事典や目録などの書物を気ままに紹介していきます。

私撰「明治150年」日本全国デジタルアーカイブ集0 「明治150年」に際して

私撰「明治150年」日本全国デジタルアーカイブ集0 「明治150年」に際して

 

2018年は1868(明治元)年から数えて明治150年となる。

歴史研究界隈では、「明治150年」関連施策各府省庁連絡会議/内閣官房「明治150年」関連施策推進室による「「明治150年」関連施策」の動向が、若干の用心を伴いつつ注目されているといえよう。

これらの施策の状況は、同サイト上の「各府省庁連絡会議」等の資料から確認できるほか、「明治150年」ポータルサイト - 内閣官房「明治150年」関連施策推進室

にて

  • イベントカレンダー
  • デジタルアーカイブ
  • 主な取組
  • リンク集

が広く一般向けに公開されており、徐々に充実しつつある。

イベントカレンダーを見ると、一人では決して追い切れないほど多くの関連事業が各都道府県で日々行われていることに、目を瞠らざるをえない。

 

研究者にとって最も気になるのはデジタルアーカイブであろう。今のところ(2018年1月6日)、新たなデジタルアーカイブを作るのではなく、関係府省庁・大学等の既存のデジタルアーカイブのリンク集を設ける方針のようだ。

一つ気になるのは、地方自治体の文書館・図書館等が管轄するデジタルアーカイブが含まれないことである。地域史料に関しては府省庁・大学よりもそれらのデジタルアーカイブが重宝するはずだが、考えてみるとそうした日本全国のデジタルアーカイブのリンク集というのはほとんど見当たらない。

 

あまり知られていない気もするので一応紹介しておくと、国立公文書館のwebサイトの「関連リンク」(ホーム画面の一番下の目立たないところにある)に、

のリンク集があり、「全国公文書館等」から都道府県・市区町村が作成したデジタルアーカイブの有無は確認できる。

関連リンク:国立公文書館

しかし、これは公文書館に限られるため、図書館が作成したデジタルアーカイブは含まれない。

文書館・アーカイブズが立ち遅れた日本において、図書館はその代替的役割を良かれ悪しかれ果たしてきており、デジタルアーカイブに関してもまた然りである。

それらの成果が広く共有されない現状への歯がゆさ、「明治150年」への向き合い方、そして何よりも私の好奇心・利己心から、私撰「明治150年」日本全国デジタルアーカイブ集として各都道府県別に、公文書館・図書館・大学の垣根を越えて、どういったデジタルアーカイブがあるのかを確認しようという試みである。

ただ、私の問題関心に従い、明治以降の近代史研究の史料として有用なもの、という限定をつける。(前近代のみのデジタルアーカイブや、あまりに現代に近い自治体の電子広報の類などは含まない)

 

果たして2018年中に終わるのか、それとも正月に書き始める日記のように挫折するかは分からない。あくまで私撰だが、心の赴くままに調べていこうと思う。

渋沢栄一記念財団webサイト

渋沢栄一記念財団webサイト

2016年11月11日午後1時より、公益財団法人渋沢栄一記念財団のwebサイトで、デジタル版『渋沢栄一伝記資料』の公開が開始された。

誰でもいつでもどこでも無料で、あの浩瀚な『渋沢栄一伝記資料』を読める!!

そう聞いて財団サイトを開いてみて、その他のコンテンツの豊富さに圧倒された人もいるに違いない。あたかも渋沢栄一の辿った生涯と同じように、このサイトがカバーする範囲は研究から実践まで幅広いものとなっている。

それなので今回はデジタル版伝記資料は後の楽しみにとっておき、財団webサイトを紹介してみたい。どんなコンテンツがあるかは、各自で読めばわかるはず。ここでは、私が自力で調べるときにどう使うか、という基準だけで記す。

 

まずwebサイトのホーム画面は→ http://www.shibusawa.or.jp/index.html

ここから、渋沢栄一、渋沢史料館、情報資源センター、研究センター、財団概要の5つの主なページに行ける(いちいちホームに戻らなくても画面上部のタブからそれぞれ行き来できる)。研究関連では、財団概要以外の4つのページが中心となる。

 

渋沢栄一|公益財団法人 渋沢栄一記念財団

このブログを読む人で渋沢栄一が誰かを知らない人はいないだろうが、では渋沢は何をしたのかと問われて正確に答えられるような人もまたいないだろう。「渋沢栄一」の項目内の各コンテンツは、渋沢が関わった事業を網羅的に示している。

とりあえず6つに絞って紹介しよう。

渋沢栄一伝記資料』(以下、『伝記資料』)の綱文を年月日順に配列する(なお1840-67年は明治以前、1932-43年は死後として一括)。『伝記資料』に即してではあるが(つまり『伝記資料』から漏れている事項はないが)、何年何月何日に渋沢が何をしていたのかが確認できる。

 

変遷図一覧(業種別)掲載会社社名リスト(50音順)変遷図・典拠資料の見方

の3項から構成される。

見方が複雑なので、変遷図・典拠資料の見方を参照しながら前2者を読むとよい。

変遷図一覧(業種別)は業種別で現在122図が提供されている。渋沢は生涯累計で約500もの会社に関与したというが、それらの会社の設立から現在にいたる離合集散を収める。金融が33図もある一方で新聞・雑誌は1図で済むなど、渋沢の事業の力点がどこにあるのかも見て取れよう。

掲載会社社名リスト(50音順)変遷図一覧(業種別)に出てくる会社をリストにしたもので、そこから変遷図一覧(業種別)や典拠資料にリンクされている。自分が働いている会社を探したいときなど、変遷図一覧から辿ろうとすると大変なので、これは便利な機能だと思う。

 

ゆかりの地(索引地図)ゆかりの写真(リスト)渋沢栄一伝記資料』に見る旅の足跡(年代順)

の3項から構成される。

ゆかりの地(索引地図)では都道府県別に、トピック、関与した事業、○○における旅の足跡、を収録する。

ゆかりの写真(リスト)では都道府県別に、ゆかりのある場所の写真を収録する。

旅の足跡(年代順)では年月日順に、『伝記資料』綱文と先に紹介した渋沢栄一詳細年譜へのリンクをそれぞれ設け、訪問先とその内容を一覧で提供している。典拠は主に『伝記資料』の29・57巻「身辺/旅行」収載の渋沢の日記や『竜門雑誌』の記事などである。前2者は代表的な事例に絞って取り上げるが、旅の足跡では一覧としていることには注意が必要となる。

 

伝記資料目次事業一覧伝記資料の構成伝記資料の使い方、調べ方デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

の5項から構成される。

伝記資料目次は概目次を一覧でき、そこから各巻をクリックすると下位の目次詳細のページに移る。目次詳細は綱文を巻毎に記載する。

事業一覧は本編58巻収録の事業別年譜を発展させたもので、各事業名をクリックすると下位の会社名・団体名等一覧のページに移る。会社名・団体名等一覧には『伝記資料』綱文年月日・その掲載巻の目次へのリンク、変遷図一覧(業種別)へのリンクがある。

詳しくは伝記資料の使い方、調べ方を見ること

伝記資料の構成は本編58巻(58巻は索引等)、別巻10巻からなる『伝記資料』の構成を簡潔に記す。

公開されたばかりのデジタル版「渋沢栄一伝記資料」はここに含まれるものの、今のところ別のページ扱いになっている。

デジタル版のトップは https://eiichi.shibusawa.or.jp/denkishiryo/digital/main/

 

渋沢書誌データベース資料リンク国立国会図書館

の2項から構成される。

渋沢書誌データベースと銘打つものの、更新が2009年に止まったままで網羅性には欠ける(全514件)。とりあえずの確認用にすすめる。

資料リンク国立国会図書館国会図書館のページへのリンク集。具体的には電子展示会、憲政資料、近代デジタルライブラリー(響きが懐かしい、現在は国立国会図書館デジタルコレクション)。2010年最終更新とあるため、各自検索に励まれたい。

 

1909年の渋沢の渡米を、主に『渡米実業団誌』に拠り、団員一覧、渡米マップ(地図)、日程詳細などのコンテンツを提供している。

 

渋沢史料館|公益財団法人 渋沢栄一記念財団

東京都北区西ヶ原2-16-1にある渋沢史料館の施設概要・展示案内などを掲載する。

「渋沢研究会例会」の案内や、雑誌『渋沢研究』の目次一覧が有益。

 

情報資源センター|公益財団法人 渋沢栄一記念財団

旧名は実業史研究情報センター。渋沢敬三の日本実業史博物館構想に由来するため、渋沢栄一だけでなく渋沢敬三関連の情報も含む。2項だけ紹介する。

渋沢栄一が関係した会社を中心とする社史データベース。2014年に公開され、現在1562冊を収録し毎年追加している。

個々の社史から、基本情報/目次/索引/年表/資料編、のデータを採録し検索に供している。

絵引データベース(全271件、2009年最終更新)嫡孫渋沢敬三が日本実業史博物館設立に向け収集した絵引である。URLが簡潔を極めている。

 

大変長くなったので、デジタル版『渋沢栄一伝記資料』は後日を期す。

『全国地方史誌総目録』北海道・東北・関東・北陸・甲信越/東海・近畿・中国・四国・九州・沖縄

『全国地方史誌総目録』北海道・東北・関東・北陸・甲信越/東海・近畿・中国・四国・九州・沖縄

 

編集:日外アソシエーツ編集部、発行:日外アソシエーツ

刊行:2007年6月、7月。

「北海道・東北・関東・北陸・甲信越」編には北海道、青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の20都道府県、

「東海・近畿・中国・四国・九州・沖縄」編には岐阜県、静岡県、愛知県、三重県滋賀県京都府大阪府兵庫県奈良県和歌山県鳥取県島根県岡山県広島県山口県徳島県香川県愛媛県高知県、福岡県、佐賀県長崎県熊本県大分県、宮崎県、鹿児島県沖縄県の27府県の分が含まれる。

自治体や教育委員会の編纂した地方自治体史の図書目録で、「資料集、資料目録、分野史、時代史、副読本、報告書等は採録していない」

 

対象期間は明治時代から2007年3月と、既存の地方史誌の図書目録より網羅的であるため、自治体史を調べる際に現時点で最も信頼できるものと思われる。

現在の市区町村ごとに立項されるため、合併により消滅した市町村の自治体史は合併後2007年現在の市町村の項に含まれる。配列は刊行が新しい順である。

 

記載内容は、

書名/副書名/版表示/著者表示

巻次/各巻書名/出版社/出版年月/ページ数または冊数/大きさ

収録内容・範囲

以上を踏まえ、岩手県遠野市の見出しをみてみよう。刊行が新しい順に、

『千年の森へ 宮守村合併50周年記念誌』、『遠野町誌』、『宮守村誌』、『遠野市史』、『定本附馬牛村誌』、『上郷村誌』、『遠野町誌』、『上閉伊郡綾織村郷土誌』が紹介される。うち『遠野市史』の記載内容を一部引用すると、

遠野市史 遠野市史編修委員会編修

(第1-3巻省略)

♢第4巻 萬葉堂書店 1977.3 1008p 22cm

内容 近代続:大正15(1926、昭和元)から終戦まで/現代:昭和21(1946)から昭和43(1968)まで/文化/年表

と、書誌情報に加えて各巻ごとの記載範囲も説明してくれる。

 

「近現代」が複数巻にわたる自治体史では、記載範囲の区切りがOPACからは分かりにくく往々にして請求に苦労するが、『全国地方史誌総目録』を確認すればその労は省ける。近代に限らず、全時代の調査において有用な書物であろう。